打ち消し
防衛機制
私たちは、葛藤や脅威などの体験により、恥、劣等感、不安、罪悪感など様々な心理的苦痛や不快な衝動、感情の体験をします。そしてそれらの感情体験を無意識のうちに弱めたり、避けたりすることにより精神的な安定を保って生きています。
このために用いられる心理的メカニズムのことを、防衛機制(defence mechanism)と言います。
欲求が何かの妨害のために満たされなく耐え難い時や、心に負った傷をなかったことにしたいなどの欲望に対してもこの防衛機制は発動します。
防衛機制は、私たちが外からの課題や内的欲求に対処しながら生きていくうえで大切な役割を果たしており、適応機制とも呼ばれています。
ここでは、防衛機制の中の「打ち消し」についてご紹介します。
「打ち消し」とは、他者に対しての、自分で容認し難い行為や考えや感情を、それらとは真逆の行為または似たような行為をして、なかったことにしたり補ったりしようとする行動のことを言います。自らがしてしまったそうした行為がもたらす不安や罪悪感などの負の感情から逃れるための、無意識の反応です。
打ち消しの具体例には、
・夫婦喧嘩をした翌日の食事が豪華になる
・忙しくて子どもにかまってあげられない母親が、子どもの欲しがるものを過度に買い与える
・理不尽に叱りつけてしまった部下に優しく接してご機嫌をとる
・浮気をした夫(妻)が妻(夫)に対して優しくなる
・悪口を言った対象に必要以上に優しく丁寧に接する
・高額で大きな買い物の後に、細々した必要のないものを買い足す(負の感情の分散)
などがあります。
打ち消しは、多くの人が用いているだろう防衛機制のうちの一つです。
私たちは、打ち消しによって負の感情から逃げることが出来るかもしれませんが、相手にしてみると矛盾を感じ、ぎこちなく見える行動と言えるかもしれません。
また打ち消しは、こうであるべきだという自己の理想像と現実の自分の行いとのギャップを補う働きをし、過去の失敗や過ちに対し自責の念が強い人により多く現れる傾向があります。
今回は、防衛機制の「打ち消し」についてご紹介しました。
防衛機制は、決して「悪いもの」ではありません。
しかし、過度に防衛に依存し事実をカモフラージュすることで、本来の問題の解決への道を閉ざしてしまうこともあります。
時には自分の本当の感情や欲求と向き合ってみることが望ましいでしょう。
最後までお読みいただき有難うございました。
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