マイナス化思考
認知行動療法でご説明している認知の偏りのパターンの「マイナス化思考」についてのご紹介です。
何でもないことはもちろん、時には自分の実績や長所などの良いことまでも根拠なく否定したり、悪いことにすり替えたりしてしまう思考のことです。
褒められた、良いことがあったなどのポジティブな出来事をありのままに受け入れられないばかりでなく、ネガティブに捉えてしまう傾向があります。
マイナス化思考のあるサラリーマンのAさんは、業務に関係のある資格試験に見事合格しました。しかし合格通知を受け取っても、「今回は問題が簡単だったから受かったのだ。これはまぐれだ」と考え、素直に喜べません。試験に受かったことを友人に話すと、「すごいじゃないか!おめでとう。流石だなぁ」と言われました。
するとAさんは、「あんなこと言っているけれど、心の中ではこんな試験は誰でも受かると思っているに違いない。あぁ話さなきゃよかった…」と考えます。上司からは、「よく頑張った。この資格を活かしてますます頑張ってくれよ。期待しているよ!」と激励されますが、「たまたま受かっただけなのにあんなこと言っている。嫌味なのかな…」と考え、暗い気持ちになってしまいました。
この例のように、喜ばしい出来事であっても、事実をそのまま捉えることができずに悪いほうへ悪いほうへと考えてしまい事実を客観的にみることが出来なくなっており、あらゆる物事や他者の反応などを根拠なく悪く解釈し、同時に自分の価値を低く見積もったり、価値など無いと考えてしまったりするのがマイナス化思考の大きな特徴です。
良いことに対しては「これはまぐれだ」と考え、悪いことに対しては「ほら、やっぱり」と考える傾向があるので、不合格であった場合には、「やっぱり私はダメな人間だ。私には出来ることなんか何ひとつないのだ」と自分を責めて落ち込んでしまいます。
人から褒められてもそのまま受け止められず、過度に謙遜して否定したり、何か下心があるのではないかなどと勘繰ってしまったりするかもしれません。また、楽しい夢を見たのに、「こんなに楽しい夢は何か悪いことが起きる前兆に違いない」などと考えてしまうこともあるようです。
しかし、マイナス化思考のすべてが悪いわけではありません。マイナス化思考は人類が生き延びてきた過程で必要な、役に立つ能力の一つでもありました。最悪の状況を予測し事前に対策を練るなど危機管理の面でプラスに働く側面も持っているのです。ですが、そのマイナス化思考があまりに強くなりすぎると、他者の親切心や好意や愛情さえも素直に受け取ることが難しくなるため良好な人間関係を築くことが難しくなることがあります。また、自分の価値が信じられず自ら行動に制限をかけてしまい、本来持っている実力が発揮できないこともあるでしょう。さらには、それら様々なことが積み重なり心の不調につながってしまうことも少なくありません。マイナスに考え過ぎて自分をつらくしてしまうことがパターン化しているように感じるならば、そのパターンを修正したほうが良いのかもしれません。
まずは自分のマイナス化思考のパターンに気づくことから始めてみましょう。
マイナス化思考は、無意識のうちに浮かんでくる考え方のくせなので自分一人では気づくことが難しい場合があります。そのような場合には、カウンセリングを利用してはいかがでしょう。根拠のない解釈によって全てをマイナス化してしまうのを一旦止めて、事実や出来事をありのままに捉える客観的な視点を養うためには、第三者的な立場のカウンセラーとともに取り組む認知行動療法が有効です。
人生においては、ネガティブに考えて備えたほうがよい場面もあれば、ポジティブに考えて前を向いて進んだほうがよい場面もあるでしょう。カウンセリングではマイナス化してしまう思考をプラス思考に180度変えようとするのではなく、物事をありのままに見て、考え方のくせに縛られることなく柔軟にその物事を捉えることが出来るようになることを目指します。その際、様々に揺れる自分自身を否定したり批判したりすることなくありのままに優しく受け入れることも大切なことです。
自然に沸き起こる本当の感情や気持ちを感じる心をゆっくり育ててみませんか。マイナス化思考が気になる方は是非ご相談ください。
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