テーマ:認知の偏り

拡大解釈・過小評価

認知行動療法でご説明している認知の偏りのパターンの「拡大解釈・過小評価」についてのご紹介です。

 

自分の失敗体験や短所などマイナス面を必要以上に大きく捉える一方、成功体験や長所などプラス面は取るに足らないつまらないことと極端に小さく評価してしまう考え方です。他者に対しては反対の評価を行い、プラス面はさらに大きく、マイナス面は小さく捉えたり見逃したりします。

 

認知の偏り(拡大解釈、過小評価)拡大解釈・過小評価の思考のパターン(くせ)のある人は、小さなミスをしたときに、「あぁ、何てことをしてしまったんだ。すべての信用を失ってしまった。もう終わりだ(拡大解釈)」と考えてしまいます。反対に、大きな成功をおさめたときには、「こんなことたいしたことではない。喜ぶような話でもない(過小評価)」と解釈します。

 

一方で、他者に対しては逆の解釈をするため、ミスをした同僚には、「あんなのたいしたミスではない(過小評価)。私と違ってあいつはなんて優秀なんだ(拡大解釈)」と考えます。

大会で自己新記録を出して優勝しても、「まだまだこんなんじゃダメだ。ライバルはもっと頑張っている」と考えたり、実際には良い友達に恵まれているのに、「私の性格が悪いから友達がいないんだ。○○はあんなに友達がいるっていうのに…」などと考えたりします。

 

自分の悪い部分や出来ないこと、持っていないものなどのマイナス面や短所は過大に評価し、良い部分や出来ること、持っているものなどのプラス面や長所が過小評価される「拡大解釈と過小評価」は対になっていますので、どちらか一方の傾向がある人はもう一方の傾向も持ち合わせていると考えられます。すると、その評価による両者の乖離はますます大きくなり、自分には取柄など無い、自分はダメな人間だという自己否定が強くなってしまいます。

 

また、十分な根拠がないにも関わらず、他者のことは悪いところなど一切なく、うらやむほど素晴らしく思え、それに比べ自分は…と考え劣等感を抱いたり、自己嫌悪に陥ってしまったりすることもあるでしょう。

「たいしてよく知らない他人の子どもがとても優秀に見えるのに、自分の子どもがどんなに頑張ってもまだまだと感じてしまう」
「最近結婚した友人がとても幸せそうで羨ましい。それに比べて私はなんて不幸なんだろうと思う」このようなことを感じた経験のある方は少なくないでしょう。しかし、この考え方がくせのようになり強化されると人間関係や社会に上手に適応出来なくなってしまうこともあるのです。そのような場合には、一度その考え方を見直す必要があるのかもしれません。

 

「拡大解釈・過小評価」は、事実や出来事をありのままではなく拡大したり縮小したりして見ることから「双眼鏡のトリック」とも言われます。自分の目で現実を正しく捉えることが出来るようになるために、まずは、物事をありのままに見ていない自分に気づくことからはじめてみましょう。

「すべてが終わりだ」という考えは誰に聞いても同意されるものでしょうか?
もし大切な人がそのように言ったら何と声を掛けるでしょうか?
過去に本当にすべてが終わったことはあったでしょうか?
このように様々な角度から問いかけてみると、やや極端に考え過ぎていることに気づくかもしれません。

認知行動療法カウンセリングまた、よく出来ている部分、うまくいったことを思い返したり、注目したりするように意識してみましょう。注目されずに通り過ぎていった良いことがたくさんあることにも気づくことでしょう。

カウンセリングで取り扱う認知行動療法では、その気づきを踏まえて、どのように考えることがより事実に忠実なのか、どのように解釈することが今後の自分にとって望ましいかなどを検討しながら、これまでのくせに縛られパターン化されたものではない新たな考え方を考案し、自分の中に考えのレパートリーを増やしていきます。

 

人には良い面も悪い面もあって当然です。自分の悪い面に気づき、より良くなろうと意識を高くすること自体は悪いことではありません。しかし、実際以上に悪い面が誇張され、良い面が全く見られなくなってしまうことは心の健康を維持するために良いとは言えません。「拡大解釈・過小評価」が気になる方は是非ご相談ください。

 

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